4月19日(月)東京都労働委員会にて、映画演劇労働組合連合会(略・映演労連)、映演労連フリーユニオン、映演労連フリーユニオン・PAC支部の3者を申立人として、㈱パシフィックアートセンターを被申立人とする不当労働行為救済命令申立を行い、同日記者発表も行いました。

 本件は、会社(PAC)が、高所作業の安全管理改善を求めてきた組合員Sさん(八潮メセナ勤務)を本年3月末で雇い止めした事件です。私たちはこの雇い止めが無効であるだけでなく、正当な組合活動に対する報復であり、明確な不当労働行為だと考えています。


■不当労働行為救済命令申立(概要) 2021年4月19日提出

申立人 映演労連/映演労連フリーユニオン/映演労連フリーユニオン・PAC支部
被申立人 ㈱パシフィックアートセンター(PAC)

 被申立人の行為は、次のとおり労働組合法第7条第1号、第3号に該当する不当労働行為であるので、審査の上、下記の救済命令を発するよう申し立てます。

<請求する救済の内容>

1 被申立人は、組合員Sに対する2021年3月31日付雇止めがなかったものとして取り扱い、同人を原職に復帰させなければならない。
2 被申立人は、組合員Sに対する2021年4月1日以降原職に復帰するまでの間に同人が受け取るはずであった賃金相当額及びこれに対する年3分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
3 被申立人は、本件不当労働行為に関する賠償金を支払わなければならない
4 被申立人は、本命令受領後1週間以内に下記内容の文書を申立人らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人の本社(中央区新富2−8−1金鵄ビル)、八潮メセナ、IMAホール、歌舞伎座、新橋演舞場、国立劇場、ところざわサクラタウン、京都南座、大阪松竹座の見やすい場所に1か月間掲示しなければならない。

「当社が貴組合のSに対して行なった2021年3月31日付雇止めは、貴組合の団結破壊ないし弱体化を企図した支配介入、不利益取扱いであると東京都労働委員会において認定されました。当社はこの行為について深く陳謝し、命令に従って是正を行うとともに、今後、このような行為を一切行わないことを誓約します。


■被申立人 ㈱パシフィックアートセンター(PAC=パック)

東京都中央区 代表取締役社長 村山研一 従業員数 530 名
国立劇場や東京国際フォーラムなど首都圏を中心に公共ホール等の管理運営を受託する他、歌舞伎座や新橋演舞場など舞台施設に多くのスタッフを送り出す企業。

■高所作業の安全衛生に関する問題点

 PACでは「森のホール21」事故の以前にも2015年に同じく従業員の墜落死亡事故が発生していました。2015年の事件についても「身を乗り出す作業」が想定されないことを理由に落下防止の施策が講じられていなかった可能性が否めません。同様の重大事故が繰り返されてしまった背景に、PACの安全管理に対する問題があると考えます。
 さらには、一般的に劇場など舞台で行われる公演制作も含め、芸術分野の多くの労働現場は複数の事業者が様々に関与して運営されています。しかし、労安法では特定元方事業者(建設業・造船業)については、元請・下請の混在する作業における労災防止を義務付けていますが、いわゆる芸能従事者が働く制作現場については、残念ながら法的な安全責任の所在が曖昧な状態となっています。このことも芸能分野の労働安全を脅かす一要因と考えられます。
 私たち映演労連ら三者は、今回の雇い止め問題の解決とともに、芸能分野における労働災害防止の在り方についても声を上げていきたいと考えています。