映画の自由と真実ネット
ニューズレター No.13(2001.4.25発行)
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4・19『ムルデカ』を検証する集い」に
真実を守ろうとする映画人、映画ファンが結集!

 4月19日に東京・文京シビックセンター5階で行なわれた「日本映画の自由と真実が危ない!4・19『ムルデカ』を検証する集い」は、会場いっぱいの61名が参加し、日本映画の自由と真実を守ろうとする映画人、映画労働者、映画ファンの熱気で大いに盛り上がりました。

 集いは、映画『ムルデカ17805』の元ネタにもなっているビデオ『独立アジアの光』(終戦50周年国民委員会企画/共同テレビ制作)を見たあと、「日本の戦争責任資料センター」事務局長の上杉聰さんに「『独立アジアの光』の嘘を暴く──インドネシア侵略の真実」と題して講演していただきました。上杉さんは、日本の大東亜戦争がアジアの解放をもたらしたという『独立アジアの光』の嘘を具体的な事実をもって暴くとともに、なぜインドネシアで日本の侵略の歴史が明確に総括されていないのか、について明らかにしました。

 また、『ムルデカ』の試写を観た映画評論家の山田和夫さん(ネット代表委員)は、映画『ムルデカ17805』がいかにアジア侵略の歴史の真実をゆがめているかを語り、「『ムルデカ』は『新しい歴史教科書をつくる会』の映画版だ」と強く批判しました。

 このあと集いは、「日本の侵略戦争を"アジア解放の戦い"と描く『ムルデカ17805』を批判するアピール」を、満場一致で採択しました。

 集いには、ネット代表委員の大澤豊監督から、以下のメッセージが寄せられました。

「4・19『ムルデカ』を検証する集い」へのメッセージ

 集いにご参加の皆様に、敬意と連帯の気持ちを込めてご挨拶を申し上げます。

 『プライド』から『ムルデカ』へと動く日本映画界の動きは、大変に憂えるものと考えています。日本とアジアを巡る問題は、ますます重要な情況にあり、そうした中での、こうした事態に厳しい眼を向け、機敏に対処していく必要があるだろうと思います。

 私がこれまで歩んできた映画づくりの道で、大切にしてきたものは、人間の生き方であり、真実に忠実な姿勢でありました。それは、歴吏や文化というものに対しても同様です。そうした姿勢を守って、様々なテーマを取り上げ、そこに関わる人物像を描いてきました。

 尊敬する今井正監督の遺作となった『戦争と青春』でプロデューサーを務めた時も、戦後50年目の節目に自ら企画した『GAMA月桃の花』を監督した時も、歴史の真実に忠実たらんという姿勢で、そうした作品を作り上げました。

 現在の日本で、真実に忠実な、良心的な映画を作る事は、ますます困難な情況になっていますが、その姿勢を崩すことなく、多くの市民のご支援を得て、映画関係者も相互に協力して、忍耐強く取組みを進めていく事が大切だと思います。

 私は今、『アイ・ラヴ・フレンズ』という新作の撤影に入っており、集いの場に参加できませんが、同じ思いを込めて、仕事を進めている事をお伝えして、ご挨拶にかえさせていただきます。

大 澤  豊


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【映画評コーナー】……………………山田和夫

韓国映画に聴く歴史の鼓動
38度線の悲劇に挑む
JSA

 いま韓国で『タイタニック』『シュリ』を超える大ヒットを続ける『JSA』が5月に公開される。"JSA"とは、Joint Security Area(共同警備地域)のこと。38度線を境に南北朝鮮の兵士が対峙するJSAで、偶然のことから南北兵士間に交流が生まれる。映画はある夜、北側の警備哨所で起きた2名の北側兵士射殺事件、そこから逃げ出した南側兵士をめぐって、事件の真相をポリティカル・サスペンスの手法でドラマティックに展開される。監督パク・チャヌク、主演ソン・ガンホ他。

 『シュリ』の場合はハリウッド映画そこのけのスピードとアクションで見せ、ドラマの底に民族分断の悲哀をにじませた。『JSA』は、派手なアクション・シーンは極度に抑えられ、南北兵士の人間的な接触を真正面から見つめる。とくに注目すべきは、主役の北側軍人の描き方。まさに等身大の堂々とした表現で、思慮と決断を兼ねそなえた人物として見つめられている。だから見る方は南北のちがいを越えて、同じ民族の同胞同士がなぜ分かれて住まなければならないか、その不条理への怒りをかき立てられることになる。ドラマは悲劇で終わるけれど、もう南北統一の歯車は逆転させられることがあるまいと、確信させられる。

 この映画は1997年12月に企画され、2000年2月にクランク・イン、同年9月に公開された。その間、2000年6月に歴史的な南北首脳会談があった。映画はそのような歴史を先取りさえし、歴史とともに歩んでいる。歴史の鼓動をスクリーンから聴く思いがした。

 

  日本映画の良心示す秀作
  降旗康男監督の『
ホタル

 降旗康男監督、高倉健主演の『ホタル』を見た。日本映画があの悲惨な戦争と対峙して思いのたけを吐露した秀作である。

 高倉健の山岡は、鹿児島の知覧基地から出撃、不時着して生き残り、戦死した戦友の婚約者・知子(田中裕子)と結婚し、漁業にいそしんでいる。"知覧の母"と慕われた食堂の女主人・富子(奈良岡朋子)の口から語られる特攻隊員最後の日日。そのなかにホタルとなって帰って来ると言い置いて出撃した兵士がいて、翌日の夜、ホタルがあらわれたとき、富子らはみなその兵士の"帰還"と涙した。

 そうした痛切な記憶のなかで、年老いた現在の富子が老人ホームに入って引退するとき、彼女を送る会が開かれる。そこでの彼女の話は、奈良岡の熱演もあって、強烈な印象を残す。彼女はついに若者たちは「殺された」と絶叫、この映画が特攻隊員の死を悲しむだけの映画ではなく、深い怒りをたたえた作品であることをあかし立てる。

 さらに知子が在日朝鮮人・金山(小澤征悦)の婚約者であり、金山が「朝鮮民族の誇りをもって死ぬ」と山岡らに語った言葉を遺族に伝えるため、夫妻で韓国を訪れ、金山の遺族の村に行く。現地ロケで韓国俳優が出演したこのシーンは、あの戦争における日本の加害責任に迫るすぐれた出来映えであり、しかも日韓両国民の未来に希望を抱かせる。

 一方で『ムルデカ』のように、あの戦争の真実を逆立ちさせる映画が出来るとき、日本映画の良心はその対極にあることを立証した『ホタル』である。

山田和夫(ネット代表委員/映画評論家)


【情報コーナー】

*あの伊藤俊也が、今度は「押しつけ憲法」映画!?

 映画『プライド』の監督・伊藤俊也が、タカ派で有名な文芸評論家江藤淳氏(故人)の著書をベースに、『二百三高地』の天尾完次プロデューサーと組んで、今度は「日本国憲法はマッカーサーのGHQによって書かれ、つきつけられたもの」という映画を準備しているそうです(スポニチ3月19日)。

 まだアドバルーンを揚げた段階のようですが、憲法改悪の流れに乗り、それを加速させようという危ない意図が見え見え。要注意です。

 

*韓国文化放送が「映画の自由と真実ネット」を取材

 韓国では、歴史を偽る「つくる会」の教科書への批判が高まっています。その韓国の韓国文化放送(MBC)から、映画『ムルデカ』について「映画の自由と真実ネット」に取材がありました。

 代表委員の山田和夫さんがインタビューに応じ、「『プライド』製作グループが第二弾として作った『ムルデカ』は、『つくる会』教科書の映画版」と断じました。その模様が4月17日の「MBCニュースデスク」で放送されました。これをきっかけに、アジアで『ムルデカ』に対する大きな批判が起こりそうです。

 

●編集後記/『ムルデカ』の公開も近づいてきました。ところで会員の皆さん、「講演集/映画の自由・映画の真実」をぜひ買ってください!


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