映演労連 '16 春闘方針

2016年1月25日 映演労連第1回中央委員会

NO WAR! NO NUKES! NO WARMING! 平和と民主主義、個人の尊厳を取り戻そう! 映演労働者の雇用と権利を守るため、生存権をかけた闘いとして2016春闘を闘い抜こう!

I. '16春闘をめぐる情勢

1. 政治・経済の情勢

 昨年、戦後70年の節目の年に、集団的自衛権の行使容認を認める安保法制を強行成立させた安倍政権は、着々と戦争に加担するための動きを強め、手始めに南スーダンへの駆けつけ警護に自衛隊を派遣するとの報道も出た。しかし、安倍首相の言う「切れ目のない安全保障政策」とは名ばかりに、選挙に勝つための争点ごまかしのため、選挙が済んだ後にこれを延期するという。
 他にも公明党に押し切られる形での軽減税率導入や、高齢者への3万円一律支給というバラマキなど、選挙に勝つための無党派層に受ける政策を連発する姑息なやり口を平然と取っている。そして選挙に勝った後には弱者切り捨ての独善的な政策を行なうのである。
 そのような安倍政権の民主主義破壊行為に対抗するべく、共産党が野党各党に夏の参議院選挙において「野党共闘」を呼び掛け、選挙協力を持って団結して戦争法を廃案に追い込み、立憲主義を取り戻す闘いの提案をしている。しかし、野党第一党の民主党や分裂した維新の党は、「政策が一致しない」「共産党と共闘するとそれ以上に保守票が逃げる」など共産党へのアレルギーに話を逸らし、まるで「与党ボケ」のような煮え切らない姿勢で現実から目を背け、先のデモにも多数参加した市民の期待を裏切っている。

 自公政権は野党間の調整不足に付け込み、衆参同日選も視野にしている。過去の同日選は自民党の圧勝で終わっているだけに、戦争法反対の一点共闘で野党がまとまらない限り、自公独裁体制はますます揺るぎないものとなる。
 安倍首相の悲願である憲法改正、緊急事態条項など、私権を制限する法制を乱発することが容易に想像され、一般市民にとってますます危険な権力として安倍政権は君臨するであろう。権力にとって都合のいいようにさせないためにも、今春闘は経済面の闘いのみならず、社会情勢にも目を向けた闘争態勢を取らなければならない。

 安倍首相が主張する「アベノミクス」最大の効果である株価上昇も、中東情勢の不安定さや原油安、チャイナショックなどの影響で、日本の株式市場からも急速に外国資本が回収され株価の下落に歯止めがかからない。
 さらにはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金財源の株式運用をいっそう緩和し、株式直接投資を解禁する法案を今国会に提出しようとしている。私たちの貴重な年金が、政権の株価操作によって大きく毀損されかねない大問題だ。また、いわゆる「トリクルダウン」についても、先に竹中平蔵は「そんな効果などない。イノベーションなどの自己努力もせずに口を開けておこぼれを待っている方が悪い」などと無責任な否定をしている。

 安倍政権の取る経済政策のデタラメさが明確であるにも関わらず、マスコミはその欺瞞性について一切報道しようとしない。そればかりか現政権に批判的な一部のメディアに対して圧力を掛けている有様だ。今のマスメディアは「社会の木鐸」でもなく、もはや「権力の犬」である。そのようなマスメディアの在り方にはいっそう批判を強め、国民世論を喚起させる闘いをする必要がある。戦争法廃止はもちろんのこと、辺野古基地問題の撤回や原発再稼働反対など、重要な課題がひしめいている。

「アベ政治」は戦争法や憲法改悪のみならず、労働者派遣法の改悪をはじめとして我々労働者の権利にも手を付けている。残業代ゼロ法案や、金銭による解雇自由化法案などの労働法制の全面大改悪を狙ってくるのは明らかだ。
 '16春闘はその労働法制改悪をさせない闘いの取り組みも重要である。

2. '16春闘をめぐる経済界、労働界の動き

(1) 経済界の動き

 大企業だけが史上空前の利益を計上し、300兆円を超える内部留保や株主配当の積み増しを行い、政府への要請であった法人税率減税(本年度に32.11%を前倒しで29.97%へ)までも得るなど、財界の強欲さは留まるところを知らない。
 3年連続ベアは必然の状況にも関わらず、経団連の榊原会長は年頭の記者会見で「ベアについては業種や各社の収益状況によって対応すべき。ベアは経営にとって重荷、継続的な引き上げは慎重に考えざるを得ない」と発言した。一方で業績が向上した加盟企業に対し、ボーナスや各種手当などの一時金を含めた年収増加を積極的に検討するよう求める報告案をまとめるなど年収の引き上げこそは否定しないものの、月例賃金引き上げに対しては昨年よりかなり後退した方針を掲げている。
 消費動向の活性化には残業代や一時金など不安定収入ではなく、月例賃金の引き上げが必須とされている。ベアへの消極姿勢は、デフレ脱却を目指すという経団連方針とは相容れない矛盾した考えであり、好業績にもかかわらず昨年比を下回る賃上げ水準で更なる収益増を目論む守銭奴の姿ばかりが鮮明に映る。

(2) 労働界の動き

 連合 の神津会長は年頭記者会見で、ベアに消極的な経団連方針を批判するように「全ての経営者に月例賃金引き上げで消費を喚起するよう求めたい」と発言した。しかし、11月開催の中央委員会で決定した方針は「ベアは2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする」となっている。3年連続のベア要求ではあるが、「ベア2%以上(定昇分と合わせて4%以上)」とした昨年よりも僅かにトーンダウンした。その根拠は、賃上げが進んだ一方で中小企業における格差が広がったためとしている。これを反転させるため「産業全体の底上げ・底支え、格差是正に寄与する取り組み」を強調している。
 しかし、傘下の単産では軒並み連合方針を下回る「ベア3千円以上」の要求に留まるなど、昨年を大きく下回る内容となっている。特に、今期2兆円の純利益を見込む企業内で組織するトヨタ労組ですら、昨年半額の3千円要求である。中小企業との格差に配慮こそしたのだろうが、下請け単価是正も要求しておらず、連合方針は宙に浮いた印象だ。

 全労連・国民春闘共闘は、安倍政権の二つの暴走(米国追従の戦争する国づくり・労働者と地域を犠牲にしたグローバル競争国家づくり)に歯止めを掛けるべく、'16春闘を通じて国民世論との共同と労働条件の底上げによって、内需拡大・地域経済再生の流れを作ろうとする方針を掲げている。
 概要としては戦争法廃止の共同を拡充するため2000万人統一署名を職場の内外で推進する、実質賃金の底上げとして月額2万円以上、時間額150円以上、時給1,000円未満の労働者をなくす運動に取り組むなど。集中回答日翌日の3月17日を最大の山場と位置づけ、ストライキをはじめとする組合員総決起の終日行動を呼びかけている。職場の取り組みと戦争法廃止、労働法制改悪阻止などの闘いを結合させることで、春闘の前進と組織の拡大を企図し、'16春闘期間中は三大署名(戦争法廃止・全国一律最賃・労働法制)に統一的に取り組む。
 低減傾向のつづく組織課題については、4ヶ年計画を策定中で財源の確保とともに新たに全労連オルグを配置するなど、150万全労連を目指した方針を今夏の大会で決定する予定である。

3. 映画・映像産業の情勢

(1) 映画産業の情勢

 1月26日に映連が発表した2015年全国映画概況によると、2015年の映画界は、年間興収が2,171億円台(前年比104.9%)となり、2000年の興収発表以来、歴代2位の好成績だった。内訳は、邦画が1203億67百万円(前年比99.7%)、洋画が967億52百万円(前年比112.1%)を記録し、洋画が伸張した。構成比は邦画55.4%:洋画44.6%。入場者数も若干増えて、1億6663万人(前年比103.4%)であった。

 興収トップ10をみると洋画6本、邦画4本と洋画の健闘が光った1年とも言える。10本のうち実写作品が4本、アニメが6本で、邦洋ともにアニメが強かった。夏作品が軒並みヒットを記録し、『ジェラシック・ワールド』『ベイマックス』が90億円越え、『ミニオンズ』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』などが50億円を超えた。邦画では、アニメ、コミック実写化作品にもヒットが生まれた。

 さらに邦洋問わず、シリーズもの、フランチャイズもの、リブートものがヒットし、『妖怪ウォッチ』が78億円超え、『バケモノの子』『名探偵コナン 業火の向日葵』『ラブライブ! The School Idol Movie』など、例年にもましてアニメ作品が印象に強く残った。邦画実写では『HERO』などが大ヒットを記録した。2014年の『アナと雪の女王』に続き、2015年も好成績の洋画作品が揃った結果、3年連続で洋画のシェアが回復している。

 作品別興収トップ10は、1位が『ジュラシック・ワールド』95.3億円。以下、2位『ベイマックス』91.8億円、3位『映画妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』78億円、4位『バケモノの子』58.5億円、5位『シンデレラ』57.3億円、6位『ミニオンズ』52.1億円、7位『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』51.4億円、8位『HERO』46.7億円、9位『名探偵コナン 業火の向日葵』44.8億円、10位『インサイド・ヘッド』40.4 億円。

 東宝は2015年の興収10億円以上の作品が29本となり、年間興収は731億円(100.3%)。12年連続で500億円を超え、5度目の700億円越え達成となった(歴代4位)。定番アニメ化した『妖怪ウォッチ』シリーズや『バケモノの子』でジブリ作品の不在を埋めるなど、さらなるアニメ強化の方針がみられた。一方、松竹の年間興行収入は116億円、東映は109億円だった。

 12月の映画興行が前年実績を下回る興行会社が多いなか、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』と『映画妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』の動員が際立っている。ムビチケオンラインの12月月間販売枚数が前年同月を上回り記録を樹立。同月に『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『映画妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』『007 スペクター』『I LOVE スヌーピー The Peanuts Movie』『母と暮らせば』などの大作・話題作の公開や2016年1月~3月公開予定の大作も売れ行きが好調で後押しした。

 現時点での『スター・ウォーズ フォースの覚醒』96億円で、最終推定興収は120億円に届くかどうかといったところ。TOHOシネマズ新宿・日本橋では、動員・興収の両方で公開2日目の日計がTOHOシネマズの単一作品・劇場として過去最高を記録。新宿では、過去最短20日で興収2億円を突破。『アナ雪』の3日間興収9.8億円を大幅に上回る出足となるなど記録更新が続いた。『映画妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』は、週末動員ランキングでは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』をおさえて1位を獲得し、映画業界に衝撃が走ったことは記憶に新しい。

 4月に開業したTOHOシネマズ新宿は、12月までの7ヶ月で累計入場者数が152万人を突破するなど圧倒的な集客力をみせ、興行成績全国1位となった。同じく4月開業の109シネマズ二子玉川も好調で、累計入場者数は100万人近くにのぼった。これらを牽引するのが劇場上映システムのアトラクション化であり、IMAXや4DX、MX4D導入である。五感で体験・楽しめ、IMAX・4DXともに存在感を一気に増した。洋画・邦画・アニメ・ODSの4DX作品が増加し新たな付加価値を提供することによって客単価が上昇し(平均入場料金は史上初の1,300円台にのり1,303円となった)、興行会社の興収増に貢献した。2013年に導入された4DX、MX4Dは14年末には8館、15年末には33館に拡大。同様にIMAXは22館まで増えている。109シネマズ大阪エキスポシティは、IMAX次世代レーザーと4DXを同時に導入した世界初の映画館として話題となった。

 シネコンの開業は、YEBISU GARDEN CINEMAの再オープンを含め11サイト・108スクリーンとなり、全国トータルで3,437スクリーンとなり、前年より73スクリーン増えた。うち、デジタル対応スクリーンは97.5%に達している。その一方で、109シネマMM横浜、恵庭・東宝シネマ8といったシネコンや、TOHOシネマズ有楽座、シネマート六本木などが閉館となった。

 190カ国で映像配信サービスを提供しているNetflixを筆頭に、2016年はメディアの変化による消費者動向の変化に対応することがさらに必要となってくる。在京民放5社によるTVerは、見逃し配信の成長性にかける。東宝はテレビ局と動画配信を目的とし共同でコンテンツ制作をするプロジェクトを立ち上げる。

 その一方で、独立系映画館として『トレインスポッティング』『アメリ』のヒットを生んだシネマライズが今年に入った1月7日、30年の歴史に幕を閉じた。パラマウントピクチャーズジャパンは、2015年12月をもって営業終了している。日本国内の自社配給終了はパラマウントの世界的な組織再編成の一環であり、今後のパラマウント作品は東宝東和の子会社・東和ピクチャーズが配給・宣伝を行っていく。

 パラマウント解散により多数の離職者・解雇者が出たことや新メディア・事業形態への対応と、劇場映画産業を取り巻く環境は引き続き厳しいことが予測される。

(2) 映像ソフト業界の状況

 JVA(日本映像ソフト協会)発表の2015年1月から11月のビデオソフト売上累計は1,893億7,900万円で、前年の同期と比べても92.9%と、二年連続で数字を落としている。内訳はDVD売上が1,092億1,700万円で前年同期比89.1%、BDが801億6,300万円で前年同期比98.6%と昨年の同時期よりもやや売上を落としている。

 DVDにおいてはセルが625億5,400万円で前年同期比87.6%、レンタルは458億1,700万円で前年同期比90.9%と、10%~20%弱まで数字を落としている。

 BDにおいてはセルが765億5,000万円で前年同期比99.1%、レンタルが33億9,300万円で前年同期比84.7%と昨年よりも数字を下げており、昨年の『アナと雪の女王』のような大ヒット作がなかった反動からか、特にレンタル市場においていっそうの厳しさが浮き彫りとなっている。

 有料動画配信市場は2015年9月2日に全世界大手の「Netflix」がついに日本国内のサービスを開始した。野村総合研究所の市場動向調査によれば、動画配信サービス市場は2020年には2,000億以上に拡大すると予測。これはパッケージ市場を抜いて、映画の年間興収規模とほぼ同等となり、映像業界にとって大きな市場と成り得る可能性がある。

 しかしながら、AmazonプライムやLINE LIVEといった既存に大人数のユーザーを持つ企業がこぞって配信サービスを開始し、Huluやフジテレビオンデマンドに代表される各テレビ局の配信サービスの参入、dTVなどのキャリア系のコンテンツ配信とプラットフォームが乱立しており、市場は既にレッドオーシャン状態である。ユーザー獲得のために独占配信や相乗効果を狙った映画本編のスピンオフ配信といった施策が次々と行われており、今後は映像製作において各プラットフォーム側の営業戦略の意向を強く受ける可能性も大いにある。

 配信業者主体の製作委員会が組成されることは、新たな映像製作の拡大ともなる一方で、各プラットフォームに合わせた放送素材の製作によるコスト増や配信と同時のパッケージ発売による顧客の奪い合いが起こり、パッケージ市場の更なる縮小といったことも考えられるため、映像制作全般においてプラスに働くかどうかはまだ不明な点も多い。

(3) アニメ業界の状況

アニメ業界の現状
 1月16日現在のテレビ地上波作品は週52本(東映アニメ調べ。再放送、再編集番組を除く)で、昨年8月の57本から5本減だが、1月中に放映開始の新番組が数本予定されている。
 52本のうち、土日放映22本、深夜枠15本。またテレ東系22本となっている。少子化や、DVDの売上が減少しているなか、地上波テレビの放映本数はテレビ東京を中心に週50本以上を続けているのである。 製作会社では、大手の東映アニメとトムスがそれぞれ6本を制作している。

日本アニメ業界の今後
 2015年、注目の劇場アニメであった『虐殺器官』だが、制作会社である「マングローブ」が9月29日までに営業を停止し自己破産の申請準備に入ったというニュースが流れ、アニメ業界に大きな衝撃を与えた。このニュースから、日本のアニメ業界が抱える問題が浮彫りになったのではないだろうか。
 日本のアニメが国内外で評価されている理由にストーリーや映像の質の高さがある。しかし、この特徴は制作費に影響を及ぼす。作品のクオリティーを上げるために制作予算を超過し、「制作赤字」が出てしまう事がしばしばおきている。しかもその赤字の多くはアニメ制作会社の負担となってしまうケースが多いという。
 アニメーターやスタッフの確保も深刻である。アニメーターが複数の作品をかけもっているケースが普通である。さらに制作進行をはじめとする若手スタッフは貧困のために離職率も高く、現場の人手不足は改善されていない。
 テレビアニメはDVD、BDの収益に大きく依存している。テレビアニメの制作費のリクープは、DVD、BDの売上次第だが、購買層のコアファンに向けて作品を制作しても日本アニメ市場は似たテイストの作品が多く、競合率が高い。さらにインターネットで無料動画が直ぐにアップロードされてしまう状況など、パッケージの売上規模を縮小化させる諸条件が増えており、現状のビジネスモデルには限界が来ている。これでは、第二の「マングローブ」が出てしまうのも時間の問題かもしれない。

4. 演劇界の情勢

(1) 商業演劇の状況

 松竹では、この秋は歌舞伎の通し上演と新作歌舞伎が目立った。歌舞伎座では50年ぶりの『競伊勢物語』、『伽羅先代萩』の通し、新橋演舞場『スーパー歌舞伎Ⅱ―ワンピース』10〜11月2ヶ月上演。大阪松竹座『阿弖流為(アテルイ)』があった。南座『あらしのよるに』などは話題つくりの上でも、動員の上でも新しい成果を生んだ。松竹株式会社第150期中間報告でも、新作歌舞伎の今後の取り組みについて別項を設けて強化をうたっている。収支報告が見えてこないので俄には言い難いが、今までにない集客があったと思われる。

 東宝は四半期報告で、帝劇での『DREAM BOYS』、シアタークリエ『クリエ・ミュージカル・コレクション』「ジャニーズ銀座2015」『ライムライト』他が満席となり、『放浪記』が新キャストで10月〜11月上演された。日生劇場での『ABC座2015』公演も売り切れになったとしている。経済報告では、演劇事業の営業収入約114億4千万円、前年同四半期比16.9%増。営業利益26億8百万円、同48.1%増となっている。

(2)劇団をめぐる状況

 新劇他の分野では、戦後70年を念頭に置いた硬派な作品が相次いだ。人間が戦争で変わっていく怖さを描いた、手塚治虫の神奈川芸術劇場『アドルフに告ぐ』、青年座『外交官』、南方戦線での演劇人の生き様を描いた前進座『南の島に雪が降る』、敗戦後の朝鮮半島の現実を描いた、劇団チョコレートケーキ『追憶のアリラン』、沖縄戦を描いた、マームとジプシーの『cocoon(コクーン)』、民俗学者と戦争を描いた、てがみ座『地を渡る舟』、文化座と東演が敗戦直後の大学教授の家を舞台に戦後の日本苦悩を描いた『廃墟』他、力作が上演され、戦争法を強行した政治状況に舞台から問題提起した。
 児童青少年演劇の分野では、子どもの貧困の深刻化が影響し始めている。世界基準から見ると、すでに日本の子供の6人に1人が貧困家庭であり、その多くが片親となっている。当然文化の享受にも大きな影響を及ぼして来ることになる。各劇団とも益々公演が減少し、劇団維持に苦慮している。一方で人材不足も進み、映演労連傘下の風の子や前進座では劇団員募集を始めている。この状況下で今回の文化庁予算では次世代育成関連は減らされており、'16春闘での文化庁交渉の重要性はさらに増している。
 なお、戦争法をめぐっては、多くの演劇人が抗議の声を上げた。新劇人会議は多くの劇団や演劇団体の声をまとめアピールし、安保法制に反対する舞台表現者の会では多くの個人の声をまとめていった。現在も毎月19日は朝の駅頭でサイレントスタンディングが続けられている。

II. '16春闘の課題と取り組み

1. '16春闘の基本的な構え

  1.  戦争法の廃止、憲法改悪、辺野古の新基地建設、原発再稼働、労働法制大改悪、消費税増税の断固阻止、映演産業と映演各社の経営危機打開、平和と民主主義を取り戻し、働く者の生活と権利を守るため、生存権をかけ'16春闘を闘う。
  2.  映演労連を拡大強化し、要求実現力を強化して、単組でのベースアップ獲得と大幅賃上げ、非正規労働者の雇用と労働条件改善をめざし、本格的な産別春闘をさらに進める。

2. '16春闘の基本要求

  1.  生計費原則に基づいて活発な要求討議を行い、生活防衛、生活向上に足る賃上げ、一時金の獲得をめざして'16春闘を粘り強く闘っていく。
  2.  産別賃上げ要求では、「映演労働者に誰でも15,000円以上」の大幅賃上げ、すべての時間給労働者に時給150円以上の賃上げを勝ち取る。
     映演労連執行委員セミナー「経営批判闘争の進め方」開催のほか、各単組の団体交渉能力向上のための取り組みを全力で支援する。
  3.  定昇制度を確立している企業に対しては定昇の維持とベースアップを要求する。また、4月昇給を実現していない企業に対しては直ちに4月昇給を実現するよう要求する。
  4.  産別最賃制は、1日7.5時間、週5日間労働で、月額195,000円、日額9,750円、時給1,300円(=いずれもキャリア・ゼロの場合)とし、映演各企業との協定化を迫る。企業内最賃制の確立を各単組の春闘要求書に盛り込む。
  5.  映演各社の労働条件調査を進めて「映演労連2016春闘要求書」と「産別統一労働協約案」を充実させ、映演産業の労働諸条件、諸制度の均一化と底上げをめざす。「パワハラ防止規定」の制度化をさらに進める。
  6.  派遣切りや改正労働契約法を悪用した有期雇用の雇い止めを許さず、非正規労働者の雇用と権利を守る闘いに全力をあげる。
     映演産業を支えるフリー契約者、非正規労働者がまともに生活できる労働条件をめざし、賃金アップ、均等待遇の実現、労働基準法適用、社会保険の適用など労働条件と雇用契約の改善を要求していく。特に労基法適用闘争を重視し、「業務委託契約」を口実にした偽装請負を糾弾する。契約社員等の社員登用制度を各企業に迫る。また、映演各社に直接雇用を原則とすることを求める。
  7.  '16春闘アンケートの長時間労働などの結果を重視し、長時間労働とサービス残業の解消をめざす。全事業所での三六協定締結を迫る。「継続労働15時間」「インターバル11時間」「週の実労働時間60時間以内」「週1回の休日」を映演産業のルールとさせる。またワーク・ライフ・バランスを就労の原則にさせるとともに、ディーセントワークの実現、年間所定内労働時間1800時間以下の実現をめざす。
  8.  映演各社に、十分な防災対策、震災対策を講じるよう求める。
  9.  サービス残業を合法化する「残業代ゼロ制度」、首切り自由化を促進する「解雇の金銭解決制度」など、労働者を奴隷化する安倍政権の雇用破壊政策に断固反対し、これを阻止する。
  10.  
  11.  国民のプライバシー侵害につながるマイナンバー制度には反対の立場で各事業主に対し、就業規則に従業員のマイナンバー提供を義務付けることのないよう求める。
  12. 3. '16春闘の具体的な取り組み

    1.  映演労連'16春闘要求の実現と産別統一労協の締結、リストラ合理化反対、戦争法廃止、労働法制改悪阻止、映演産業の危機打開のためのストライキ権を早期に確立する。
    2.  各労組の要求書はできるだけ早めに提出し(2月20日前後)、スタート良く闘う。
       映演労連団交は各単組の回答が出る前に行い、3月~4月中旬までに集中させ、産別春闘の実効性をさらに向上させる。また各単組の団交には、必要に応じて映演労連役員が参加する。労働条件改善要求の内、インターバル規制など労働時間テーマに'16春闘の核となる重点要求を設定する。
    3.  2月16日の「映演労連'16春闘の集い」、3月22日の映演労連執行委員セミナー「経営批判闘争の進め方」を必ず成功させる。また、映演労連産別ストに合わせて映演労連ニュース特別号を全組合員に配布する。
    4.  2月16日の「映演労連'16春闘の集い」(映演労連統一行動)、2月25日の「MIC2016春闘決起集会」、3月25日の「夜の銀座デモ」(映演労連統一行動)、3月17日の「国民春闘共闘全国統一行動」(映演労連統一行動日)、3月22日の映演労連執行委員セミナー「経営批判闘争の進め方」、4月18日の週「映演労連産別スト」(映演労連統一行動)、毎月19日に取り組まれる「19日行動」、「戦争法廃止2000万人統一署名」街宣行動、5月1日「第87回メーデー」(映演労連統一行動)などに積極的に取り組み、産別統一行動を強化して'16春闘を盛り上げていく。5月連休明けの闘いも重視する。
       政府・経団連などへの要請行動にも取り組む。厚労省交渉、経産省交渉、文化庁交渉等に継続的に取り組む。
    5.  国民春闘共闘集中回答日翌日の3月17日には全国統一行動が取り組まれるが、映演労連もそれに呼応し、3月17日を映演労連統一行動日として'16春闘要求実現、戦争法廃止、労働法制改悪阻止をメインテーマに単組独自のストを含め、昼休み集会や社前集会、時間内組合活動などを行う。映演労連の一斉回答指定日は、今年も現実的に考えて4月13日(水)に設定し、その翌週に産別統一スト(15分間程度/映演労連統一行動)を構えて、映演各社に一斉回答を迫る。
       その意思統一と準備のため、オルグ・教宣活動を積極的に展開する。また、妥結日も揃えるよう努力する。回答速報体制を強化し、映演各社の労働条件調査を充実させる。
    6.  組合員全員で闘う春闘をめざし、全組合員が一度は春闘行動に参加することを組織する。
    7.  「労働者派遣法の抜本的改正」「最低賃金・全国一律1,000円」の実現に向けて行動し、全労連や国民春闘共闘委員会が提起する行動に最大限参加する。
    8.  映演各社に、高齢者雇用安定法を遵守し、定年延長も含め、雇用と年金の連携がはかれるよう60歳代前半の雇用確保を要求する。60歳以降の賃金は、60歳到達時と同等とするよう要求する。
    9.  映演産業に致命的な打撃を与える消費税増税と社会保障制度の改悪に反対し、国内産業と国民生活を破壊するTPP協定からの即時撤退を求める。

    4. リストラ「合理化」、雇用破壊に反対し、職場と権利を守る闘い

    1.  映演各企業の経営危機には機敏に対応し、雇用と職場の確保を第一に闘いを構築する。資本の勝手なM&Aは許さない。リストラ「合理化」攻撃に対しては、産別ストを背景に闘う。各企業ごとの経営分析・対策会議を再開する。日ごろから経営チェック能力を高めるとともに、事前協議制を確立する闘いを進める。また、執行委員セミナー「経営批判闘争の進め方」での学習を通じ、経営責任・雇用責任を厳しく追及する。経営者の横暴を許さない闘いを強化する。
       労基法違反、労働契約法違反、派遣法違反、不当労働行為などの違法・脱法行為の一掃を目指す。契約労働者の労働基準法適用を闘い取る。
    2.  映演関連争議などリストラ「合理化」に備え、争議対策委員会を継続し、職場と雇用を守る闘いに全力を挙げる。15年春にリストラ「合理化」を強行した㈱KADOKAWA及び親会社カドカワ㈱の動向を注視する。また㈱角川大映スタジオの組合への不当労働行為が再発しないよう注視する。㈱KADOKAWA全従業員の労働条件整備に際しては、不利益変更を生じさせない闘いを行う。また、㈱KADOKAWA従業員と(株)角川大映スタジオ従業員との間での格差の発生を許さない闘いを構築する。㈱角川大映スタジオでの組合への不当労働行為が再発しないよう注視する。
    3.  フリーユニオン争議を全面的に支援し、早期の勝利解決を目指す。
    4.  産別組織映演労連として労働相談を本格化させ、映演産業労働者の雇用と職場を確保するとともに、いっそうの団結を図る。
    5.  JAL、IBM不当解雇撤回の闘いや、MIC争議団、全労連争議団の勝利をめざして積極的に支援する。

    5. 映演産業の基盤拡充と映演文化発展をめざす闘い

    1.  2012年11月29日付「フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けた要請書」に基づき、映演労連内で議論を深め、映画各社や業界団体、内閣府知財本部など関連省庁との協議・意見交換を継続する。文化芸術議連にも働きかけ、国と産業全体で原版保存問題の解決に向けた道筋をつけさせる。
    2.  長らく続く映演文化予算の縮減傾向に強く抗議し、日本映画への公的助成の拡大をめざす。映画の表現の自由を守り、公的助成の拡大を進めるために、多くの映画人、映画団体と共同して闘う。
    3.  「映画振興要望書」や「日本映画振興基金」「映画原版保存要請書」の背景となる運動を強化するため、映職連や日映協、JAniCA(アニメーター演出協会)、映連などとの懇談を継続する。製作・配給・興行の現場で働いている組合員を集めた部門別会議や産業政策委員会を行う。
       それらの活動の成果を活かして経産省と文化庁に対する「映画振興要望書」を作成し、5~6月段階で経産省交渉と文化庁交渉を行う。
    4.  映演労連の中で演劇文化と舞台美術の振興に関する議論を更に喚起し、「演劇文化振興に関する要望書」を策定したうえで文化庁交渉を実現する。
    5.  各省庁の対応を形式的な「要望への回答」に終わらせず、実情の改善につながる回答を引き出すよう工夫する。特に文化庁当局に交渉への真摯な対応を求める。
    6.  JAniCA(アニメーター演出協会)との懇談の成果を踏まえ、「アニメ産業改革の提言」をさらに充実させ、アニメ関係者とアニメ業界に広めて大きな共同を目指す。アニメ分野の活動を強化する。
    7.  放送局の一方的な番組製作費削減や権利剥奪など、放送局と番組制作会社の不公正な支配関係の改善をめざして行動する。

    6. 憲法改悪阻止と、平和と民主主義を守る闘い

    1.  戦争法廃止、憲法改悪阻止の闘いを'16春闘の最重要課題に位置づけ、それを中心に平和と民主主義を守る闘いを創意工夫して進める。平和を求めるすべての団体・組織・市民と連帯し、憲法違反の戦争法廃止を目指す。
    2. 「映画人九条の会」の発展に向けてよりいっそう努力する。総がかり行動実行委員会「戦争法廃止2000万人統一署名」、「19日行動」に積極的に取り組む。憲法改悪(明文改憲・解釈改憲)の策動に断固反対して闘う。
    3.  普天間基地の無条件返還を求め、辺野古への基地移設強行を断固として阻止する。欠陥機オスプレイの基地配備を撤回させ、アメリカ追従の外交政策に反対して日米安保条約の廃棄をめざす。
    4.  国民の知る権利や言論表現の自由を奪い、日本を監視社会化させる秘密保護法の廃止に向けた取り組みに全力を傾注する。メディアの報道を監視し、不公正報道には機敏に抗議する運動を進める。
    5.  国民の生命を危険に曝し続ける原発依存のエネルギー政策を、再生可能な自然エネルギー利用へ抜本的に転換させる。原発再稼働、海外輸出を許さず、原発ゼロの実現に全力を傾注する。
    6.  震災復興に乗じた大企業中心の「構造改革」強行に反対し、被災者本位の復興事業を実現させる。
    7.  地球温暖化防止の運動を盛り上げるため、公害・地球懇が製作し、映演労連が制作協力したDVD「地球の温暖化をとめて2 未来につなげ!」の普及と上映運動を進める。
    8.  平和運動推進委員会の自主的な活動を一層強化する。
    9.  国政選挙や地方選挙を通じて参政権を行使することが、平和と民主主義を破壊し生存権を脅かす悪政を正し、労働者・国民の声を実現する絶好の機会と位置付け、政党支持の自由・政治活動の自由を完全に保障しつつ組合での政治論議を強め、政治意識を高めて国民本位の政治の実現を目指す。

    7. 組織拡大と組織改革の闘い

    1.  組織拡大プロジェクトを再開し、組織人員を1,200人台に戻す計画を策定し春闘で実践する。各単組は会社従業員の過半数の組織化をめざす。「組織拡大ロードマップ」を各単組で責任を持って具体化し、実践するとともに、毎月の進捗を点検する。日本舞台芸術家組合の組織拡大・強化に力を集中する。
    2.  映演労連フリーユニオンの拡大と、多発するフリーユニオン争議に対応できる体制をつくる。
    3.  教宣活動を重視し、「映演労連ニュース」「映演労連ホームページ」「パソコン・ネットワーク」をより充実させる。調査活動については各労組と連携を強化し、産業情報の集中と主要労組の労働条件を集約し'16春闘の核となる重点要求設定に活用する。回答速報体制を強化する。
    4.  各労組とも、全労連初級教育制度「わくわく講座」の受講を拡げる。
    5.  映演労連事務所の移転を早期に計画し、6~7月を目途に実現する。

    III. 産別スト権の確立

     '16春闘では産別スト権を確立して闘う。高率での確立をめざす。

    IV. '16春闘の主な闘争スケジュール

    予定
    2月 8日 スト権投票開始
    9日 映演労連組織拡大プロジェクト(18:45~映演労連)
    14日 安倍政権NO!大行進(13:00~代々木公園ケヤキ並木)
    16日 映演労連'16春闘のつどい(18:50~日本橋公会堂)【映演労連統一行動日】
    20日頃 各労組'16春闘要求書提出
    21日 止めよう!辺野古埋立て2・21首都圏アクション国会大包囲(14:00~国会前)
    23日 映演労連第4回中執(15:00~東劇13階)、映演労連争議対策委員会(18:00~同所)
    25日 MIC'16春闘決起集会(18:30~文京シビックセンター4F)
    29日 FUワンコインミーティング「有重プロデューサーと語る」(18:50~文京シビック3C)
    3月 4日 スト権投票締め切り
    7日 スト権集約日
    9日 国民春闘勝利!中央行動(11:30~厚労省前、12:20~野音集会、13:30~国会デモ)
    11日 映演労連第2回中央委(第1回中央闘争委員会)(18:45~シビックホール3階会議室2)
    16日 全労連・国民春闘共闘集中回答日
    17日 国民春闘共闘全国統一行動(【映演労連統一行動日】 MIC'16春闘デモ(18:45~虎ノ門)
    19日 戦争法廃止!安倍内閣退陣!3.19総がかり行動(13:00~日比谷野音集会、銀座デモ)
    22日 映演労連執行委員セミナー「経営批判闘争の進め方」(18:50~文京シビック5階A/B)
    25日 夜の銀座デモ(18:30~築地川銀座公園)【映演労連統一行動日】
    26日 原発のない未来へ!3.26大集会(13:00~代々木公園)
    4月 13日 映演労連一斉回答指定日
    15日 MIC争議支援総行動、国民春闘中央行動(11:50~DNP包囲デモから)
    18日の週 映演労連一斉ストライキ(予定)【映演労連統一行動】
    5月 1日 第87回メーデー 【映演労連統一行動】
    3日 憲法集会
    以上