2018年春闘要求書

　私たち映画演劇労働組合連合会（映演労連）は、本年１月２６日に第１回中央委員会を開き、以下の通り２０１８年春闘要求を決定しました。
　映演労働者の労働条件改善と映画演劇産業の発展のため、貴社との団体交渉を申し入れるとともに、早急に誠意ある回答を要請します。

記

　１．本要求書と、映演労連傘下の松竹労働組合より提出される２０１８年春闘要求書について、誠意をもって答えるよう要請します。なお映演労連は、本年度の集中回答指定日を４月１１日（水）に設定しましたので、各社とも４月１１日までに回答されるようお願いいたします。

　２．賃上げと労働条件改善に関する要求

　「生計費原則」に基づいて各社に対して定昇維持はもちろんベアを含む積極的な賃上げを行うことを強く要求します。８時間働いてまともに暮らせるだけの賃金として、すべての映演労働者に15,000円以上の賃上げを、すべての時間給労働者に「時給１５０円以上」の引き上げを行うよう要求します。　（映演労連１８春闘の重点要求）
　映演産業の産業別最低賃金と企業内最低賃金を、月額２２万５千円以上、時給１，５００円以上（＝いずれもキャリア・ゼロの場合。全労連最低生計費試算調査16年6月公表＝25歳単身者22万～25万円/月も根拠）とし、企業内最低賃金協定を締結するよう要求します。　（映演労連１８春闘の重点要求）
　別紙提出の「産別統一労働協約案」「パワハラ防止規程案」に基づき、貴社と映演労連との統一労働協約の締結を要求します。
　「成果主義賃金」と「裁量労働制」の導入に反対するとともに、すでに導入した企業は制度の見直しを要求します。
　映演労働者の生活防衛、生活向上のため、夏季―時金については昨年を上回る一時金を支給するよう要求します。契約社員、契約労働者、アルバイト労働者、パート労働者などにも夏季―時金を支給してください。
　労働契約法２０条の趣旨をふまえ、非正規労働者と正規労働者との均等待遇（退職金、諸手当含む）をはかるよう要求します。
　契約社員、契約労働者、アルバイト労働者、パート労働者に、労働条件の最低基準を定めた労働基準法を適用するよう要求します。「請負・委託契約」を口実にした雇用契約ではない働かせ方は直ちに改善してください。
　また、加入条件を満たしている契約労働者、アルバイト労働者などを雇用保険に加入するよう要求します。
　映演各社ともメンタルヘルス･ケアに努め、有給休暇の消化と長時間労働の解消に努力してください。
週休２日制・週実働３５時間・年間所定内労働時間１８００時間以下の実現をめざすとともに、一日８時間以内の労働を就労の原則とし、ディーセントワークが実現するよう努力してください。
具体的には全事業所での３６協定締結（特別条項は原則認めない）、月４５時間を超える超過勤務の割増率を５０％、未払い残業・サービス残業の根絶、継続作業１５時間以内、非召集（勤務間インターバル）１１時間以上、週の実労働時間６０時間以内、週１回以上の休日に向けて制度改善するよう要請します。　　　　　　　　　（映演労連１８春闘の重点要求）
　高年齢者雇用安定法を遵守し、定年延長も視野に、雇用と年金の連携がはかれるよう６５歳までの雇用確保を要求します。６０歳以降の賃金は、６０歳時と同等とするよう要求します。
　介護離職者ゼロの実現を目指した措置を講じ、職場と家庭の両立が可能な労働諸条件整備を果たして下さい。
　人員不足による労働強化と職能継承の危機は、企業そのものを疲弊させていきます。映演各社とも、直接雇用による人員補充と人材育成に真剣に取り組んでください。
　住宅手当・家族手当の増額、退職金制度の維持拡充、福利厚生の充実を含めた職場環境の改善などの諸要求についても、誠意をもって回答されるよう要求します。
　映演各社は十分な防災対策、震災対策を講じて下さい。
　労働者派遣法の抜本的改正、最低賃金・全国一律時給1,000円以上の実現にご協力ください。

3. 女性労働者の地位向上と母性保護に関する要求

　映演各社とも改正･男女雇用機会均等法に則り、昇進・昇格・昇給格差などの性差別禁止、間接差別の禁止、安心して妊娠･出産･育児ができる職場環境を作るよう要求します。
　生理休暇、出産休暇、育児休暇、介護休暇、有給休暇などの社内諸制度の周知徹底と、契約社員、契約労働者、アルバイト労働者、パート労働者などへの適用も要求します。
　女子保護規定を遵守し、母性保護の拡大など女性労働者の労働環境改善をめざすよう要求します。また、女性労働者の深夜労働を減らすよう要求します。
　セクシュアル・ハラスメント（性的少数者＝LGBT差別含む）、マタニティ・ハラスメントに対する社内啓蒙、諸制度の整備点検を行うよう要求します。

4. リストラ「合理化」反対、雇用と経営に関する要求

　映演各社は雇用に責任をもち、雇用の継続を最優先するよう要求します。
　経営のツケを労働者にしわ寄せしないよう要求します。労働者犠牲の一方的なリストラ「合理化」は行わず、「整理解雇の４要件」を守り、従業員に経営展望を示すよう要求します。希望退職の募集や早期退職優遇措置の開始にあたっては、当該労組と事前の協議を尽くすことを要求します。
　ＫＡＤＯＫＡＷＡに対しては更なる希望退職や退職強要をしないよう求めます。また、全従業員の労働条件均衡を図る際には事前協議を厳守し、不利益変更を行わないよう要求します。また、角川大映スタジオ従業員との間でも格差が生じないよう要求します。
　亜細亜堂は従業員の雇用に責任を持ち、事業所に働く請負・委託契約も含めた全労働者に労基法を適用・順守させるよう要求します。
　改正派遣法や改正労契法を悪用した「派遣切り」や有期契約労働者の「雇い止め」を行わず、アルバイト労働者、契約労働者、派遣労働者の雇用と権利を守るよう要求します。
有期雇用と派遣は臨時的・一時的業務に限定し、１年以上、または２回以上契約更新した有期契約労働者は無期雇用に、派遣については直接雇用としてください。また、契約社員等の社員登用制度を実施してください。　　（映演労連１８春闘の重点要求）
　映演各社は労働者を雇用する際、必ず雇用契約書を結んでください。少なくとも、全ての事業所で働く方に労災保険が適用されるよう厚労省指導（「芸能関係事業主の皆様へ・リーフレット」16年12月公表）を順守し労災保険への加入を徹底して下さい。
　映演各社は派遣労働者との団体交渉に応じて下さい。　　　　　　（映演労連１８春闘の重点要求）
　映演各社は社会的責任（ＣＳＲ）を自覚し、法令遵守（コンプライアンス）の立場を明確にするよう要求します。いわゆる「ブラック企業」にはならないでください。
　不当労働行為はいっさい行わないよう要求します。

5. 映画・映像・演劇の文化と産業の振興に関する要求

　映画各社は日本のフィルム映画文化の維持と、デジタルデータを含めた映画原版保存のために最大限の努力をしてください。
　映演文化予算の縮減に強く抗議し、経営側も日本映画への公的助成の拡大をめざして積極的に行動してください。併せて、文化庁の全面移転に反対するとともに、その拡充を呼びかけて下さい。
　日本の撮影所を守り、撮影所機能を強化するよう要求します。撮影所への公的支援に向けて、業界を挙げて努力するよう要求します。また、映画映像製作に携わる人材の育成と職能の継承に努めてください。松竹は、労使協定に基づいて新撮影所の早期建設に全力を傾注してください。
　映演産業に働くフリー契約労働者、不安定雇用労働者、俳優などの権利確立と社会的地位向上、労働保険（労災保険、雇用保険）の適用などに向けて、業界として努力するよう要求します。
　労働災害を防止するために全力を傾注し、受動喫煙の防止などを含め職場環境と作業環境を改善し、「安全衛生委員会」を必ず設けてください。また、業界全体の労使で構成する「労働災害防止委員会」を設置するよう要求します。
　テレビ局に「優越的地位による不公正な契約関係の押し付け」をやめさせ、番組制作について公正なビジネス関係を作り上げるとともに、充実した番組作りに努力するよう要求します。改正下請二法を守り、守らせてください。
　日本のアニメ産業の歪みを正し、空洞化を防ぐために、労基法を上回る就労を業界のルールとすることを目指し、そのためにアニメ産業改革に向けた行動を起こしてください。
　舞台芸術・伝統芸能等への公的支援の大幅縮減に抗議し、企業・劇団サイドも演劇文化への公的助成の拡大をめざして積極的に行動してください。
また、伝統演劇の後継者育成、舞台美術スタッフの人材育成、劇団活動に対する公的施設の利用規制の緩和と設備の拡充、観客の料金負担軽減のための税制優遇措置などについても、行政などに支援を要請してください。
　演劇文化の質的向上には、演劇人が演劇で自活できることが必要不可欠です。企業・劇団は、雇用条件・職場環境の改善に努力するよう要求します。
　映演各社とも、下請法の順守はもとより、グループ内取引も含めて下請け単価引き上げに努めるなど、産業全体の底上げ実現を目指してください。
　映演各社は企業内に留まらず、産業全体から全てのハラスメント行為を一掃するよう、業界の先頭に立って働き掛けて下さい。

6. 平和と民主主義、国民生活向上に関する要求

　日本の立憲主義を否定する安保関連法の施行は、平和と民主主義に立脚する私たち文化産業の存続を脅かすものと考えます。憲法９条改憲阻止と「秘密保護法」や「共謀罪」も含めた戦争法の廃止に向けた労働組合の取り組み（３月１５日の統一行動ほか）についてご理解いただくとともに、協力と共同を要請いたします。
　長時間労働が社会問題となる中、政府は働く時間ではなく成果に応じて賃金を決める「残業代ゼロ」「過労死基準を超える残業時間規制」「格差の固定化」などを一括した「働き方推進法案」を進めようとしています。さらなる過労死と差別を招来する同法案に反対する労働組合の取り組み（３月１５日の統一行動ほか）についてご理解いただくとともに、協力と共同を要請いたします。
　原発ゼロと再生可能エネルギーへの転換、地球温暖化の防止をめざして、ともに行動してください。また、核兵器のない世界を作るためにともに行動してください。
　更なる消費税増税は映演産業に致命的な打撃を与えます。消費税１０％への増税や社会保障制度の改悪などに反対し、国民生活向上に向けてともに行動するようするよう要請します。

以上