スパイ防止関連法制の制定に反対する声明
高市政権が発足して以来、「国家情報会議設置法」の強行成立、公布をはじめとして、一連のスパイ防止関連法制の制定が画策され、緊迫した局面が続いている。政府や与党のみならず、野党側からも極右的な主張で排外主義や国家統制を扇動する政治勢力が同調し、法案の推進を後押した現状は極めて深刻である。彼らは「日本はスパイ天国である」との虚構を煽り、G7並みの情報機関の設立が必要であると強弁するが、時の総理自らが過去の答弁でこれを否定しており、法案の根拠となる立法事実は存在しない。そればかりか、今国会での国家情報局設置を皮切りに、秋には市民の正当な文化・経済活動をも監視対象とする「外国代理人規制法案」や死刑・無期拘禁を伴う厳罰法、さらには来年の通常国会における「対外情報庁法案」へと続く、三段階の恐るべき国家統制計画が露わになっている。
「国家情報会議設置法」の核心的な危うさは、市民監視に対する「歯止め」が致命的に欠如している点にある。政府は「市民監視は想定し難い」とし、第三者監視機関の創設すら拒むが、身内の閣僚による統制が機能しないことは歴史が証明している。現に、韓国における「反政府的文化人のブラックリスト作成」をはじめ、国内でも過去に公安警察や自衛隊情報保全隊が「小林多喜二展」や正当な労働運動・市民運動を違法に監視し、市民の動静や虚像を歪めてプライバシーを侵害した事実がある。国家情報局はこれらの行き過ぎた監視活動の司令塔となり、市民の思想・良心の自由、そして表現の自由を根本から蹂躙する組織に他ならない。
さらに見過ごせないのは、表現の自由や思想信条の自由を著しく脅かす「国旗損壊罪法案」までもが、与野党の強権的な勢力による数の力によって強行採決の末に成立してしまった事実である。主観的な感情を刑罰の基準とする同法案は罪刑法定主義に反し、時の政府を風刺・批判する芸術作品や映画表現を抑圧・萎縮させ、「非国民」をあぶり出す愛国心の強制へと繋がる危険性を孕んでいる。これは、映画や演劇を用いた国家批判そのものを罪に陥れる伏線であり、スパイ防止法制と地続きの強権的な思想統制である。
かつて映画人の先達は、「治安維持法」に続く「映画法」によって作品の検閲や技能審査を強制され、戦時体制への翼賛を強要されるという辛苦と悔悟の歴史を経験した。私たちは、この歴史の教訓を決して忘れてはならない。情報機関の設立や国家への忠誠の強制は、戦争準備以外の何物でもなく、憲法九条によって戦争を放棄した我が国には本質的に不要である。
私たち映演労連は、平和な社会にあってこそ成立する映画演劇産業に働く者として、表現の自由と民主主義の基盤を崩壊させる国家情報会議設置法をはじめとするスパイ防止関連法制の制定に断固反対し、その即時廃止・廃案を強く求めるものである。
- 【PDFファイル(94kb)】
- 連絡先
-
- 映画演劇労働組合連合会(映演労連)
- 〒113-0033 東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301号
- 電話=03-5689-3970 FAX=03-5689-9585
- E-mail: ei-en@ei-en.net