児童ポルノ禁止法改正案に反対する声明

 映画演劇労働組合連合会(映演労連)は、2013年5月29日に自民党・公明党・日本維新の会が衆議院に提出した「児童ポルノ禁止法改正案」に強く反対する。
 もとより、私たちは実在の児童に対する性的搾取及び性的虐待から保護するというそもそもの立法主旨自体を否定するものではないし、「児童の権利に関する条約」については賛同と支持を表明するものである。
 しかしながら、今回の改正案に示される諸規定は、憲法が私たち国民に保障する言論・表現の自由に対し国の規制を促す内容となっており、到底受け入れられるものではない。
 まず、新設された改正案では第6条2項で、「何人もみだりに、児童ポルノを所持し、又はこれに係る電磁的記録を保管してはならない。」として、単純所持の禁止を謳い、続く第7条は「自己の性的好奇心を満たす目的」で、「児童ポルノを所持した者」「児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者」に対して「1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」との処罰規定となっている。
 そもそも現行法では「児童ポルノ」とは何かの定義が曖昧なままであり、主観的にいかようにも解釈できる。即ち、定義が明確化されないままでの所持・保管禁止は、不当な処罰を招来するものであり、認められるものではない。
 更に、改正案附則第2条では検討規程として、(1)漫画、アニメーション、コンピューターを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(児童ポルノに類する漫画等)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究、(2)インターネットによる児童ポルノに係る情報閲覧の制限に関する技術の開発の促進を挙げ、改正法施行後3年を目途として、検討結果に基づく必要な措置を講ずると規定している。この条項は「実在する児童の人権保護」という立法主旨を大きく逸脱し、被害児童が実在しない「漫画・アニメ・コンピューター映像」の世界に規制を及ぼす内容となっており、断じて認められるものではない。
 過剰な表現規制は創作者の委縮を招くことになり、文化は脆弱化し、枯渇してしまう。国が促進しようとする「クール・ジャパン」は土台から破壊されかねない。憲法が保障し、民主主義社会の根幹をなす「表現の自由」「思想・良心の自由」への不当な法規制は、決して許されるものではない。
 私たち映演労連はアニメ産業・映像産業に働くものが結集する労働組合として、単純所持禁止、処罰規定の設置、漫画・アニメ・コンピューター映像への新たな法規制検討に強く反対を表明するものである。

2013年6月7日
映画演劇労働組合連合会(映演労連)
中央執行委員長 金丸 研治

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