文化庁、芸文振の「検閲」的蛮行に
抗議し撤回を求める声明

 文化庁所管の独立行政法人日本芸術文化振興会(芸文振)が、本年3月に決定していた映画『宮本から君へ』に対する助成金1000万円の支給を7月に取り消していたことが発覚した。

 理由は、麻薬取締法違反で有罪判決をうけた俳優が出演していたことから「国が薬物使用を容認するようなメッセージを発信することになりかねず、公益性の観点から交付内定を不適当と判断した」というものである。

 芸文振はこの決定を取り繕うかのように9月27日付で助成金の「交付要綱」を改正し、第8条の「交付の決定及び通知並びに不正等による交付内定の取消し」の項目に、「公益性の観点から助成金の交付内定が不適当と認められる場合」という条件を追加した。

 さらに 助成金の「募集案内」の内容も変更し、「不正行為等に係る処分」という項目に、「また、助成対象団体が団体として重大な違法行為を行った場合や、助成対象活動に出演するキャスト又は制作に関わるスタッフ等が犯罪などの重大な違法行為を行った場合には、「公益性の観点」から 助成金の交付内定や交付決定の取消しを行うことがあります。」との一文を追記した。

 定義の曖昧な「公益性」という概念を振りかざし、恣意的で一方的な判断にもとづいて、文化芸術活動に介入、阻害することは日本国憲法21条が禁止する検閲に他ならない。私たち映演労連は芸文振の助成取り消し決定と交付要綱改正に断固抗議するとともに撤回を求めるものである。

 一方、芸文振が交付要綱を改正する前日の9月26日には、文化庁が「あいちトリエンナーレ」への補助金全額不交付を発表している。芸文振は、「要綱改正はとはまったく関係がない」と嘯いているが、テロ予告や脅迫の被害者に責任を押し付け、加害者の行為を追認した、文化庁の蛮行を準えるものであることは明らかであろう。

 文化芸術基本法は前文に「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重すること」を旨とすると謳っている。

 同法や日本国憲法21条「言論表現の自由」「検閲の禁止」を踏みにじる文化庁の不交付決定が、あしき前例となり、芸文振はじめ諸団体がこれ追従しているというのが実態ではないか。

 KAWASAKIしんゆり映画祭では、慰安婦問題を扱った映画『主戦場』について川崎市が主催者に懸念を伝え、一度は上映中止になるなど、安倍政権の文化行政下で、萎縮の連鎖が蔓延し始めている。

 平和と民主主義の根幹をなす言論表現の自由を蹂躙することは、断じて許されるものではない。

 私たちが働く映演産業は、平和と民主主義、言論表現の自由なくしては成立しえない産業である。

 私たち映演労働者は、戦前・戦中、国家の検閲により、言論表現の自由を奪われ、戦争翼賛を強いられた歴史を二度と繰り返さないことを誓うものとして、文化庁「あいちトリエンナーレ」補助金不交付や芸文振の『宮本から君へ』の助成取り消し、交付要綱改正など「検閲」的蛮行に強く抗議し、直ちにその撤回を求めるものである。
以上
2018年11月08日
映画演劇労働組合連合会
中央執行委員長 金丸 研治

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