映演産業に従事するフリースタッフ待遇改善の要請


 私たちは映画・演劇・アニメ産業に働く労働組合で構成する映画演劇労働組合連合会(略・映演労連)と、映演産業に働く個人で組織する映演労連フリーユニオンです。私たちは映演産業に従事する全ての労働者の待遇改善を目指して活動してきましたが、この数年の危機的状況に鑑み、各社・各団体の皆様に改めて個人として働く俳優やフリースタッフ、中小の下請会社に対する報酬の底上げなど待遇改善を要請するものです。
 2020年以降のコロナ感染症は映演産業に痛打を浴びせました。とりわけ個人で働く仲間は雇用労働者として得られる最低限の補償すら得られないまま苦境に立たされてきました。加えて2022年以降の物価の高騰はフリースタッフの生活を直撃、追い打ちをかけるように昨年10月にはインボイス制度が開始されています。俳優やフリースタッフ、中小下請会社の多くは今なお厳しい生活を余儀なくされているのです。
一方、映演文化産業はコロナ以前の9割程度に回復することが各種統計資料でも明らかです。今こそ俳優やフリースタッフ、中小下請会社に対する報酬の底上げなど待遇改善を果たして下さい。

ご参考までに私たち労働組合が24春闘で策定した統一要求書のうち、関係する項目を抜粋して列挙します。皆様におかれましては、上述した情勢をご賢察のうえフリースタッフの改善に向けた具体的な取り組みに直ちに着手されますようお願いいたします。

1.「請負・委託契約」を口実にした雇用契約ではない働かせ方は直ちに改善し、雇用契約を締結して下さい。加入条件を満たしている労働者は雇用形態にかかわらず全員を労働保険(=労災適用)・雇用保険に加入させたうえで、労基法の適用を目指して下さい。

2.貴社と取引する個人事業主に対しては適格請求書発行事業者(インボイス制度)への登録を強制せず、引き続き免税事業者を維持する方については従前の取引を維持し、報酬の増額に努めて下さい。新たに適格請求書発行事業者を取得した個人事業主に対しては従前の手取り報酬が減額とならないよう、5%程度の追加報酬を支給して下さい。
  あわせて、発注する立場となる従業員が受注者との間で関係性を悪化させたり独禁法に抵触することがないよう、本項目の誠実な履行を求めます。

3.映演各社とも長時間労働の解消に努力して下さい。週休2日制・週実働35時間・年間所定内労働時間1,800時間以下の実現をめざすとともに、一日8時間以内の労働を就労の原則とし、ディーセントワークが実現するよう努力して下さい。具体的には継続作業15時間以内、勤務間インターバル11時間以上、週の実労働時間60時間以内、完全週休二日制を実現するよう要請します。

4.映画・演劇文化の質的向上には、俳優やフリースタッフ、中小下請会社の労働者が作品創造の過程で自活できることが必要不可欠です。各企業・劇団は、契約の形式にかかわらず映演産業に従事する全ての者の報酬増額、社会的地位向上、権利の確立、労働保険(労災保険、雇用保険)の適用、就業環境の改善などに努力するよう要求します。

5.映画・演劇各社は本年秋施行予定の、いわゆる「フリーランス新法」を順守するとともに、対象となる取引に際しては、「納品や役務の提供から30日以内の報酬支払」「1ヶ月を超える拘束の際には、月割り等に配慮した支払」「前年実績がある場合は前年の5%を上回る報酬設定」「中途解約の際の補償」に取り組んで下さい。

6.映演各社とも、孫請など多重下請となる場合であっても労働関連法、下請法、ハラスメント防止法の順守が徹底されるよう、取引内容の見直しをはかり、併せて下請け単価引き上げに努めるなど、映演産業全体の底上げ実現を目指して下さい。
中小下請会社への報酬増額は、そこに働く労働者の待遇改善にも直結する大事な取り組みと考えます。

7.生成AI技術に関する国内の法整備に向けて、映像・演劇の創作にかかわる全てのスタッフと芸能実演家の立場を尊重した働きかけを求めます。

8.10%の消費税は映演産業のみならず国内の景気に悪影響を及ぼしています。消費税5%への減税を求めるなど、国民生活向上に向けてともに行動するよう要請します。

以上
2024年03月08日
映画演劇労働組合連合会(略称:映演労連)
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Tel 03-5689-3970 FAX 03-5689-9585 ei-en@ei-en.net

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