ニューズレター No.37

(2004.8.11発行)

目次

映画の自由と真実ネット第6回総会、終わる!

 映画の自由と真実ネットの第6回総会は、5月21日(金)18:45から、東京・新宿農協会館の大会議室で行われました。参加者は例年より少なく32名でしたが、3回の映画上映会、2回の講演会と1回のトーク集会、8回のニューズレター発行など活発な活動を展開した「1年間の活動報告」「財政報告」、4つの柱の「今後の活動計画」、幹事を3人増員した第6期役員の選出など、内容の濃い総会となりました。

 記念講演は、ネット代表委員で明治大学教授の山田朗さんに、「近代日本の戦争と歴史の真実」をじっくりと語っていただきました。山田先生は、「桶狭間の奇襲は、江戸時代の講談で作られた話が、明治政府の対外膨張政策の必要性から、参謀本部によって“歴史”にされた。秀吉の一夜城も江戸時代の完全な創作」「その時代の要請が、過去の歴史の真実をねじ曲げ、それを映像が拡大、定着させる」などと語り、「〈歴史修正主義〉が日本人の歴史認識を悪化させ、歴史認識の歪みが日本人の国際感覚を歪め、日本人自身にはね返ってくる」と警告しました。

 大変面白い講演でした。現在、事務局で講演録を作成中です。完成したら会員の皆さんに送付しますので、ご期待ください。

第6回総会で確認された今後の活動計画
  1. 「平和憲法を守る映画人会議(仮称)準備会」の活動を進め、早期に「平和憲法を守る映画人会議(仮称)」を結成して、平和憲法を守る運動を映画人、映画ファンの中に広げる。
    当面、「5.28憲法学習会」(18:45〜文京区民センター2A)を成功させる。
  2. 歴史の真実をねじ曲げ、戦争を賛美する映画・映像には、機敏に批判闘争を展開する。
  3. 学習と映画上映活動を積極的に進める。当面、7月14日(水)の「戦争と平和」上映会(18:45〜大塚・ラパスホール)を成功させる。
  4. 会員を増やし、100人を超える個人会員を組織する。
映画の自由と真実ネット・第6期役員
【代表委員】
大澤 豊(映画監督)
杉崎光俊(日本映画復興会議事務局長)
山田 朗(明治大学文学部教授)
山田和夫(日本映画復興会議代表委員/映画評論家)
【事務局長】
高橋邦夫(映演総連委員長)
【幹事】
山口逸郎(映画製作者)
梯 俊明(映演総連事務局長)
河内正行(全東映労連副委員長)
坂西 勝(全東映労連事務局次長)
羽渕三良(日本映画復興会議事務局次長)
金丸研治(映演総連事務局次長)
本間昭信(映演総連書記)
金山圭子(ネット会員)

米ドキュメンタリストたちのパワー
「フォッグ・オブ・ウォー」と「アマンドラ!希望の歌」

山田和夫(映画評論家・ネット代表委員)

 今年のカンヌ国際映画祭は、マイケル・ムーア監督の新作「華氏911」が話題を独占、最高のパルム・ドール賞を獲得した。日本では是枝裕和監督の「誰も知らない」に出た14才の子役、柳楽優弥君の男優主演賞にメディアの関心が集中したけれど(作品はいいものだが)、世界的な注目は昨年米アカデミー長編記録映画賞を「ボウリング・フォー・コロンバイン」でとり、授賞式でブッシュ大統領を罵倒、この「華氏911」では、ブッシュとアルカイダの巨頭オサマ・ビンラディン一家との深い絆をあばいているのだから、世界の目が彼に集まったのも、ふしぎではない。

 「華氏911」は今夏日本公開が決まり、米本国では配給するブエナビスタの親会社ウォルト・ディズニーが配給を拒否し、物議をかもしたが、これだけ話題になった映画を米資本が見捨てるわけはない。ムーアの言う「資本主義の弱味」でどうやら大統領選前に全米公開が実現する。まだ見ていないが、間違いなく日本でも、今年最大の問題作となるだろう。

 ムーアのカンヌ受賞でかげになったが、今年の米アカデミー長編記録映画賞の「フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国務長官の半日」(監督エロール・モリス)も公開される。試写を見て、アカデミー長編記録映画賞が二年連続、アメリカの戦争を撃つドキュメンタリーの力作に授賞した見識と姿勢に感服した。ロバート・マクナマラ元国防長官のインタビューをタテ糸に、初公開の視聴覚資料をまじえ、正攻法のドキュメンタリー作法でアメリカ現代史に迫る。

 マクナマラは太平洋戦争末期、B29による日本本土無差別爆撃で悪名高いカーティス・ルメイ将軍のもとで働いた。とくに一晩で10万人の市民を殺した東京大空襲の経過をかえりみて、ルメイは「戦争に勝つためだ」と平然としていたけれど、マクナマラは「そのためにやっていいことか?われわれは戦争犯罪者ではないか?」と苦渋の告白を語る。

 1962年10月、ケネディ大統領の下で国防長官になり、核戦争前夜まで行った「キューバ危機」の対処をホワイト・ハウスでつぶさに体験する。そして国防長官として戦争指導に当たった最大のものが、ベトナム戦争。「その責任は?」と問われ、「大統領にあった」と答え、自己責任には口をつぐんだけれど、ベトナムでアメリカがどれだけ多くの過ちをおかし、どんなに大きな犠牲を出したか、具体的な事実で率直に語っていくところが、この映画の白眉。

 マクナマラはフォード自動車会社の社長から国防長官へ、離任後は世界銀行総裁へ、米支配層の頂点を歩んできた。彼に米政治への本質的な批判と反省を求めるのは無理だが、この映画はその限界ギリギリの「告白」で、「フォッグ・オブ・ウォー」(戦争の霧)にかくされた歴史の真実に迫る。そして「アメリカは全能なのか?そんなはずはない」とマクナマラが語るとき、その言葉はまさに現大統領ブッシュに突きつけられたものになる。

 「フォッグ・オブ・ウォー」より、さらに地味だが、やはり歴史の鼓動を映像で伝える、もう一つのアメリカ・ドキュメンタリーが公開される。リー・ハーシュ監督作品「アマンドラ!希望の歌」(2002年)である。

 “アマンドラ”とはアパルトヘイト(人種隔離制度)とたたかった南アフリカ黒人が叫んだ言葉。“人民に権力を”の意味。そして彼らは南アフリカ白人政府の非道な人種差別に抗し、さまざまな歌を作り出し、それを武器としてたたかった。この記録映像にその時代、時代に生まれ、また変貌し、あるいは成長した「歌」の数々を黒人自身の歌唱と舞踊で見せながら、ANC(アフリカ民族会議)の指導者ネルソン・マンデラが長い獄中生活から解放され、南ア政府がアパルトヘイトの廃止を宣言、総選挙で初の黒人大統領マンデラが誕生するまでを描く。歌と踊りが溢れ、すさまじい暴力による弾圧にも、「歌」を武器として立ち向かい、一歩も退かない黒人たちの姿が感動的である。そして解放の日を迎えたときの歓喜の爆発は、文字通りの狂喜乱舞となり、その踊りの輪に老指導者マンデラの満面笑みをたたえた顔がある。現実がどんなに絶望的に見えようと、歴史は確実に前進する。その真理を全編音楽でつづりつつ、私たちに訴えかける。

 マイケル・ムーアにしても、エロール・モリスにしても、はたまたこのリー・ハーシュにしても、アメリカ・ドキュメンタリストたちのパワーには圧倒される思いである。

(2004年6月16日)

平和憲法を守る映画人会議(仮称)準備会の「5.28憲法学習会」が成功!

 映画の自由と真実ネットも参加している「平和憲法を守る映画人会議(仮称)準備会」は5月28日、東京・文京区民センターで、憲法学者の奥平康弘先生を招いて「5.28憲法学習会」を開きました。参加者は50人でした。

 「世界に誇る日本国憲法を守るために」をテーマに約1時間半の講演をされた奥平先生は、「日本国憲法は欧米諸国が近代の歴史を経て闘いとってきた様々なもの──基本的人権や国民主権、国家権力の制限などを内容とした“標準装備型”の憲法であり、それを生かすか殺すか、どう発展させていくか、これからも世代を超えて絶え間なく作り上げていく未完のプロジェクトです」「第9条は、標準装備というよりはもっと特異なものとして、まさにこの点において世界に特異な、世界に特出して特徴づけるべきものとして誇りに足るものです」と語り、「しかし政府は、世界のどの国にも自然法としての自衛権がある、自衛のために必要最小限度のものは戦力ではない、という解釈で自衛隊を容認し、拡大し、海外派遣を行ってきました」と指摘しました。

 そして奥平先生は、「アメリカに追随して海外派兵を拡大する中で、その個別的自衛権すら手かせ足かせになってきて、改憲論が急速に強まってきた」とし、「限りなく戦争のできる普通の国に近づくという現実になってきています」と世界に誇り得る憲法の危機を訴え、「もし9条がなくなったら、そのあと何が起きるか。9条がなくなることによって起こる波状効果、あるいは9条がなくなること、普通の国になることが日本にもたらす、人々の意識にもたらす変化は、何か──ということを考えていただきたい」「9条の改正問題というのは、文化『改革』の問題であって、愛国心の問題、教育制度の問題、報道の不自由の問題など様々な政治社会の問題と一体のものである」「日本の戦後民主主義はあだ花だ、日本国憲法が示した日本の道筋は付け焼刃でしかなかった、というような諸文化が、政治的諸事情が展開するようになる一つの現われであったら、怖い。そうである可能性はある」と結びました。

 大変に分析的で刺激的な内容の講演でした。平和憲法を守る映画人会議(仮称)準備会・事務局は今、この講演録を作成中です。近日中に実費で頒布できると思います。ご期待ください。

【情報コーナー】

調布市議会議が撮影所応援を採択!

 日活闘争支援共闘会議が調布市議会に提出していた「撮影所の存続について応援すること」という陳情が、6月22日の本会議で主旨採択されました。主旨採択でも大きな成果です。この成果をもって、会社を攻勢的に攻めていくことが出来ます。

映画とアニメの労働実態調査が実現!

 映画産業やアニメ界の圧倒的多数を占めるフリー労働者の労働条件は、劣悪です。そればかりか、労働者数も、労働実態も、なに一つ公に調査されたものがありませんでした。映演総連などは映画やアニメの労働実態調査を政府に要望してきましたが、このたび芸団協(社団法人/日本芸能実演家団体協議会)が5年に一度実施している「芸能実演家の活動と生活実態調査」に、映画とアニメスタッフの労働実態調査を加えることが決まりました。これは画期的です。7月中に実施される予定です。

ついに大船撮影所閉鎖4周年──6月30日朝から一斉行動!

 今年の6月30日で、松竹の大船撮影所が閉鎖されてついに満4年になります。松竹は労働組合との約束を守らず、いまだに新撮影所を作ろうとしていません。松竹闘争支援共闘会議は新撮影所建設を求めて、6月30日朝から一斉行動を展開します。8:45〜有楽町マリオン前宣伝行動、12:20〜松竹本社前抗議集会、18:45〜松竹新撮影所を促進する大集会(文京区民センター)です。ぜひご参加ください。

会員の皆さんへ、会員更新の手続きをお願いします!

 映画の自由と真実ネットの活動は第6期に入りましたが、会員の皆さんの更新手続きが遅れています。早急に第6期の会費払い込みをお願い致します。またこれを機会に、ぜひ個人会員を増やしてください。

年会費
個人会員: 1口 2,000円
団体会員: 1口 5,000円
郵便振替口座
本郷一郵便局
口座番号: 00160−1−125475
口座名: 映画の自由と真実ネット

★会員の皆さまへ…「ニューズレター」をEメールで送りたいので、メールアドレスを教えて下さい。「ニューズレター」はWord2000で作成しています。

編集後記

 去年は梅雨がダラダラとして明けませんでした。今年はどうでしょうか。7月末に表銀座を縦走するつもりなので、気がかりです。気がかりと言えば、その前の参院選です。日本国民の良識を示す結果にしたいですね、本当に。