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提案・日本映画振興基金





uploaded on 19 novembre/1998.
1998年3月 映像三団体連絡会 (日本映像職能連合、日本俳優連合、映演共闘会議)

W.「基金」による支援のシステム



1.製作への助成

(1)助成申請のあった日本映画に対して、「製作助成委員会」が審査し、「基金」が定めた基準に応じて「製作者」に助成する。
「製作助成委員会」は、申請された作品について、その製作予算、資金計画、「製 作者」の製作能力・実績、公開の方法等を審査し、作品の内容については、審査しな い。
但し、宗教や特定政党・団体・企業の宣伝を目的とした映画には助成しない。

(2)「基金」が助成を行う日本映画とは、第一義的に日本国内の劇場・ホール等で上映・ 公開することを目的として製作される映画で、主に日本のスタッフで製作・撮影され、 原則としてフイルムで製作・上映される映画をいう。
尚、「基金」の助成対象となる日本との合作映画の基準については、別途定める。

(3)「製作者」とは、主に日本国民、日本に永住を許可された者、あるいは日本での映 画活動を5年以上有している者が代表する製作会社、または制作団体とする。
「製作者」は、助成金を当該映画の製作以外に流用してはならない。
また、映画の製作、配給、興行の会計の明確化を進めるため、製作助成映画につい ては「基金」が会計監査権を持つ。

(4)助成額については、資金調達の自主的努力を促すことと、資金悪用を防ぐために、 「標準製作費」に基づく上限枠を設ける。
  一般的長編劇映画(一応の目安として1時間以上の映画)の標準製作費を当面 4億円とし、原則としてその最高40%までを助成する。
  長編アニメーション(同、1時間以上のアニメーション)の標準製作費を当面 5億円とし、原則としてその最高40%までを助成する。
  中短編劇映画の標準製作費を当面2億円とし、原則としてその最高50%まで を助成する。
  ドキュメンタリー映画の標準製作費を当面2億円とし、原則としてその最高5 0%までを助成する。

(5)新人映画監督を創出・育成するため、各ジャンルごとに新人監督作品に2割程度の 枠を与え、各助成枠に10%を加算する。

(6)助成する映画本数は、当面以下の本数を目処とし、原則として「基金」の予算の枠 内で受付順、または抽選などの方法で選定して助成する。
《試 算》
  長編劇映画 35本(35本×4億円×40%=56億円)
  長編アニメ 5本( 5本×5億円×40%=10億円)
  中短編映画 10本(10本×2億円×50%=10億円)
  ドキュメンタリー映画 5本( 5本×2億円×50%= 5億円)
  新人監督作品への加算助成 (各本数の20%として = 4億2千万円) 上限助成金の合計は85億2千万円となるが、実際的助成額はその3分の2として、
----56億8千万円

(7)助成金は無利子とし、「基金」への返済義務の順位は最下位とする。初回上映から 2次利用以降の収益を含む3年間の収支の結果、他の調達資金分以下しか製作費が回 収されなかった場合、助成金の返済は免除される。
例えば、4億円の予算の内、「基金」から1億6千万円の助成を受け、他から2億 4千万円を調達して映画を製作し、3年間の上映・普及・2次利用などの結果、製作 費が2億4千万円以下しか回収できなかった場合、「基金」への返済義務はなくなる。
3年間の上映・普及・2次利用などの収支の結果、利益が出て助成金が返済された 場合は、それを「基金」に積み立てる。

(8)損害保険会社等との協力により「映画完成保険制度」を設立し、「製作者」には、 助成映画の製作に当たって「映画完成保険」をかけることを義務づける。

2.企画・シナリオへの助成

(1)映画の新しい企画活動について、製作会社、製作団体、及びプロデューサー、監督、 シナリオライター個人に対して、助成する。
助成に対する審査は「製作助成委員会」が行い、助成は一作品平均500万円とし、 助成本数は年40本、助成総額は年間約2億円とする。

(2)新しいシナリオライターの才能発掘をめざして、毎年「基金」としてシナリオを公 募し、「日本映画振興基金賞」を与える。 予算、年間約3千万円
(内訳=「最優秀賞」1本1千万円、「優秀賞」数本×200万円、運営費)

----(1)(2)の年間助成総額は、約2億3千万円となる。

3.公開のための支援

公開のための支援は、製作助成映画が観客に届けられ、国民が安い料金と、快適な環境と優れた映写・音響設備のもとで映画を鑑賞する機会を増やすこと、日本映画を上映する劇場が増えること、映画館が全国に増える条件を作り出すことのために行う。

(1)製作助成映画を配給する配給会社(または配給団体)に、映画のプリント料(プリ ント代及び現像料)の一部を、「基金」の定める基準に基づいて助成する。
年間助成総額は、約3億円
(----「プリント代約35万円×平均プリント数約50本×年間約50作品」の3分 の1を助成する。中短編映画は一応0.5本と換算)

(2)製作助成映画を配給する配給会社(または配給団体)に、「基金助成映画」である ことの告知料も含めて、必要最低限の宣伝費を長編映画1作品当たり500万円助成 する。
尚、製作助成映画のプリント、ポスター、チラシ等には、「基金助成映画マーク」 を必ず入れ込むこととする。
年間助成総額は、約2億5千万円
(----年間約50作品×@500万円=2億5千万円)

(3)製作助成映画の海外普及のための、字幕スーパー料(翻訳料、スーパー料、初号プ リント代)について、「基金」の定める基準に基づいて助成する。
年間助成総額は、約8千万円
(----翻訳料+スーパー料+初号プリント代=約150万円。
年間約50作品×@約150万円=7,500万円。その全額を助成)

(4)必要に応じて、「基金」が劇場を一定期間借り上げ、製作助成映画の上映・普及を 促す。
また「基金」は、製作助成映画の上映に協力する「基金協力館」の育成策を講じる。
年間助成総額は、約4億5千万円
(----劇場1週借り上げ料100万円〈文化庁試算〉×4週間×全国20館×年間5 作品程度=約4億円。「基金協力館」育成事業費等=約5千万円)

(5)製作助成映画を上映した際、入場者数に応じて、「基金」の定める基準に基づいて 各劇場に(ホール上映などの場合は、興行団体に)助成する。
劇場(または興行団体)は、配給側と確認した正確な入場者数をもって「基金」に 申請する。
年間助成総額は、約10億円
(----例えば、映連統計の邦画配収等から推定すると、一昨年の邦画観客数は約3,7 00万人前後。「基金」発足後、日本映画の観客数が5千万人に増え、製作助 成映画の観客数はその3分の2だったと仮定して、製作助成映画入場者一人当 たり30円を助成した場合、
5,000万人×2/3×30円=10億円)

(6)中短編劇映画・ドキュメンタリー映画の普及と公開の場を拡大するための施策と助 成を行う。例えば、中短編・ドキュメンタリー映画の映画祭開催、中短編・ドキュメ ンタリー映画週間、長編映画との併映などを促し、一定の助成を行う。
年間助成総額は、約5億円

(7)必要に応じて、「基金」が製作助成映画のプリントを借り上げ(「基金」が映画料 を負担し)、興行側に提供する。
年間助成総額は、約5億円
(----年間5作品程度)

(8)ホール上映の場合、ホール使用料等について「基金」が定める基準に基づいて一定 の助成を行う。 年間助成額約1億円

----公開のための支援は、「公開支援委員会」が審査して行い、(1)〜(8)の年 間助成総額は、約31億8千万円となる。

4.その他の一般助成

(1)国際映画祭への日本映画出品を支援するため、映画祭参加費用、字幕スーパー料な どを、「基金」が定める基準に基づいて助成する。

(2)各地で行われる国内映画祭を支援するため、「基金」が定める基準に基づいて助成 する。

(3)ネガ原版の修復……旧作、名作のネガ原版で、修復の必要なものについてその費用 の一部を助成する。

(4)中小製作プロダクション、中小ポストプロ、中小特技プロ、中小配給業者、地方中 小映画館などに対する融資相談及び援助(融資の斡旋、債務保証、利子補給等)。

(5)聴覚障害者のための字幕スーパー製作への助成。視覚障害者のためのイヤフォンガ イド製作と設備への助成。

(6)身障者が映画鑑賞をするための、劇場設備改善への助成。

----「その他の一般助成」の年間予算は18億円とし、「一般助成委員会」が調整・ 運営する。

5.「日本映画振興基金」の管理・運営費

----年間予算約10億円とし、「運営委員会」が管理・運営する。

《1〜5の合計=118億9千万円

以上が、私たち映像三団体連絡会が提案する「日本映画振興基金」です。

この「日本映画振興基金」が実現すれば、日本映画に対する初めての本格的な公的支援が実施されることになり、衰退の一途をたどっている日本映画は、これによってようやく再生の道を進むことができるでしょう。私たち映画人は「日本映画振興基金」の実現に向けて全力を傾注する決意です。

また、映画産業の仕組みや日本映画をめぐる環境にも、根本的な改革が実施されなければなりません。「日本映画振興基金」は、日本映画再生の第一歩に過ぎないのです。

以 上

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