(株)パシフィックアートセンター(PAC)が
組合員への報復的「雇い止め」を強行

高所作業の安全管理改善を求め続けた組合員を雇い止め

(株)パシフィックアートセンター(PAC/パック 東京都中央区 代表取締役社長 村山研一 従業員数530名)は国立劇場や東京国際フォーラムなど首都圏を中心に公共ホール等の管理運営を受託する他、歌舞伎座など舞台施設に多くのスタッフを送り出す企業です。
このPACが、高所作業の安全管理改善を求めてきた組合員Sさん(八潮メセナ勤務)を本年3月末で雇い止めすると通告。私たちはこの雇止めが無効であるだけでなく、正当な組合活動に対する報復であり、明確な不当労働行為だと考えます。
 今回雇止め通告されたSさんは2018年1月にPACが管理運営を受託する八潮メセナの照明担当として採用され、3年余りに亘って勤務してきました。2020年6月、新型コロナの影響により苦境に立たされた会社は労働条件の切り下げを社内に告知。これを契機とした団体交渉が開始されたのですが、ここでSさんは初めて自分が組合員であることを公然化して会社と交渉に臨むことになりました。
団体交渉のテーマは主に2つ。一つはコロナ禍を原因とした労働条件切り下げに関する内容。もう一つは、Sさんが以前から危惧していた労働安全衛生に関する件でした。Sさんが特に懸念していたのは高所作業に対する会社の安全管理。入社以来幾度も改善を求めながら、一向に対応が進まないどころか、周囲からは「文句ばかり言う人」とのレッテル貼りを感じるようになったSさんは、こうした会社の姿勢に危機感を抱き、組合との交渉を通じて直接会社の上層部に訴えることを決意したのです。

労災死亡事故(転落事故)の発生

2020年に開催した3回の団交では会社の高所作業に対する認識を変えさせることはできず、業界団体や労働基準監督署への相談を検討していた矢先のことです。
2020年12月12日、松戸市の「森のホール21」で開催されたコンサートの撤収作業時に、PAC従業員が道具迫(せり)から転落、死亡するという痛ましい事故が発生しました。Sさんをはじめ組合は自分たちの対応の遅れを痛感し、再発防止のために出来得ることは直ちに着手しようと考えました。
PACは首都圏を中心に多くの公共ホールの管理を担っていますが、全社的に高所作業に対する安全配慮に問題があると私たちは考えました。そこで、本社を管轄する中央労基署に知り得る限りのPACの実態を指摘し、法令違反の疑いがあるとの情報提供を行いました。同様に森のホール21を管轄する柏労基署と、八潮メセナを管轄する春日部労基署に対しては法令違反に関する申告を、組合を代表してSさんの名前で提出しました。

労災事故の情報漏洩を問題視するPAC

また、重大事故にも関わらず「森のホール21」の事件が、松戸市側からも会社からも一切公表されないことから、その理由を会社に書面で質しました。これに対して、会社は「受託側(PAC)の意向だけでは情報公開できない」と、松戸市や松戸市文化財団の要請も踏まえた上で、死亡事故の公表を行わないと回答。しかも、会社は事故の調査が終了すれば公表するとしながら、情報提供の対象は業界団体に限定する方針でした。
一方組合は、この労災死亡事故の背景にPACとしての安全管理上の問題があったと考えていたことから、事態の穏便な収束を諮ろうとする会社の意向に反して、関係する労働組合や団体等に情報共有を進めることにしました。そして本年2月26日、会社はSさんに対して「森のホール21の死亡事故に関して、業界団体に情報漏洩をしたこと」等を理由に3月末の雇い止め通告を行ったのです。

不当な雇い止め理由

雇い止め撤回を求める組合に対してPACは、Sさんの雇い止めは「労災死亡事故の情報漏洩だけが理由ではない」としながら、いかにSさんが職場で疎まれた人物であったかなど、揚げ足を取るかのような事案を次々に挙げてきました。しかし、大半の指摘事項が前回契約時期(Sさんは一年毎の契約社員)の出来事であったことや、人間関係までも雇い止めの大きな理由とし始めたことから、これを組合が疑問視し、本当の理由は何か?Sさんが正義感から行った業界団体へ情報提供が最大の理由ではないのか!と2度の団体交渉で迫りました。
下に掲載した雇い止め撤回要請をもとに開催した3月29日の大詰めの交渉で会社は、組合による労基署への申告を「許せない行為」と発言し、紛糾。会社はこれを取り繕うように「労基署の件は雇い止め理由ではない」としたものの、「そんな気持ちになるのも当然だ」と自己正当化し続け、最後まで雇い止めが撤回されることはありませんでした。

以下の、切実な要請もむなしく、雇い止めが撤回されることはありませんでした。


株式会社パシフィックアートセンター
 代表取締役社長 村 山 研 一 殿

支部結成通知ならびに「雇い止め」撤回の要請

映演労連フリーユニオンは、映画演劇労働組合連合会(略称・映演労連)直轄の個人加盟労働組合です。この度、貴社に従事する複数の組合員によって「映演労連フリーユニオン・PAC支部」を結成いたしましたので、本書面にて改めて通知いたします。
支部結成の当初の目的はPACに働く個々の組合員の課題や要求を集約し、安全管理の改善を含めた諸要求の実現を目的とするものでした。
しかし、貴社による支部委員長への不当な「雇い止め」通告がなされたことから、目的の一つにこの「雇い止め」撤回を据えざるを得ない状況となりました。
そもそも、貴社が昨年6月に労働条件の切り下げを社内に告知。これを契機とした団体交渉が開始され、その際にS支部委員長は、初めて自分が組合員であることを公然化して貴社との交渉に臨んできました。
団体交渉の議題は主に2つで、コロナ禍を原因とした労働条件切り下げとS支部委員長が以前から危惧していた高所作業の安全管理に関する件であったことはご承知の通りです。入社以来幾度も改善を求めながら、一向に対応が進まない会社の姿勢に危機感を抱き、交渉を通じて直接会社の上層部に訴えることで改善を目指してきたのです。
しかし、3回の交渉でも会社の高所作業に対する認識を変えさせることはできず、業界団体や労働基準監督署への相談を検討していた矢先のこと、昨年12月12日に森のホール21で痛ましい事故が発生しました。
私たち組合は自分たちの対応の遅れを痛感し、再発防止のために出来得ることは直ちに着手しようと考え、当支部の結成をはじめとして労基署への申告等を行って来た次第です。
一方で貴社は、交渉の中心的な存在ともなっていたS支部委員長を、まるで厄介払いするかのような3月末「雇い止め」を強行されようとしています。貴社は「雇い止め」の理由について「死亡事故の情報漏洩は理由の一つに過ぎない」と強弁されますが、前述の経過から考えても到底納得できるものではありません。
貴社におかれましては、今一度本件の重大さを受け止められたうえで、「雇い止め」の撤回に向けて再考されますよう強く要請致します。


私たちはS支部委員長の職場復帰まで闘い続けます!今後ともご支援ご協力のほどよろしくお願いいたします!


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