2012年2月27日
厚生労働大臣
小宮山 洋子 様
映画演劇労働組合連合会(略称・映演労連)
中央執行委員長 金丸 研治

要請書

 私たち映画演劇労働組合連合会(映演労連)は2012年春闘にあたり、映画・映像労働者の雇用保険適用拡大、偽装請負の是正指導と労基法適用、有期契約労働の規制強化、労働者派遣法の抜本改正などについて、以下の通り要請いたします。
 各項目について貴省のご見解や方針、取り組みなどをお聞きしたく、3月中に懇談の場を設けていただくよう申し入れます。

  1.  昨年、42年間続いてきた日本最長寿のテレビ時代劇「水戸黄門」が終了しました。「水戸黄門」のスタッフは大半が作品ごとに契約してきた契約労働者であり、彼らは今、何の保障もなく半失業状態を余議なくされています。
     彼らは雇用保険の適用を強く求めていますが、実態は長期間拘束の雇用契約労働者にもかかわらず、形式的には短期間の作品契約の繰り返しとなっているため、雇用保険加入がスムーズに進んでいません。
     また、雇用保険法では失業給付要件が離職前の2年間で12カ月以上の被保険者期間が必要となっており、雇用保険に加入できても実際に失業手当が受け取れないという事態が生まれかねません。
     経済不況や東日本大震災の影響で劇映画やテレビドラマは製作本数が減少しており、映画・映像労働者にとって雇用保険の適用は死活問題になっています。私たちは映画・映像労働者の雇用保険加入促進と失業給付要件の緩和を強く要請いたします。
     なお、2010年の加入基準緩和によって加入者がどれぐらい増加したのかお教えください。
  2.  映画・映像の製作現場では、「業務委託契約」という契約形態を押しつけられて働いている非正規雇用労働者が数多くいます。しかし彼らの労働実態は、使用者の指揮命令を受けて働いている労働者そのものであり、「業務委託契約」は労働法の保護をすり抜けようとする悪質な偽装請負です。
     映画・映像界の労働現場に蔓延する偽装請負の実態を掴み、その摘発と是正指導、労働基準法適用に向けた指導を強く要請いたします。
  3.  映画・映像産業の各社では、有期労働契約の労働者も多数働いていますが、期間中の契約解除、「雇い止め」などが横行しています。常用雇用を大原則にした有期労働契約の規制制度がどうしても必要です。
     有期労働契約は臨時的、一時的業務に限定し、1年以上、または2回以上契約更新した契約労働者は常用雇用労働者とするなどの規制制度を早期に実現してください。
  4.  労働者派遣法改正案が継続審議となっていますが、昨年11月に民主、自民、公明の3党が製造業派遣・登録型派遣の原則禁止の削除、みなし雇用実施の3年延期などで合意し、政府改正案さえ大幅に後退させようとしています。私たち映演労連は3党合意案に強く反対するとともに、労働者保護の立場に立った労働者派遣法の抜本改正を求めます。
     また労働者派遣法改正案では、専門26業務の登録型派遣が例外として現行のまま認められようとしていますが、それでは映画・映像製作労働者はほとんど全ての職種において拡大解釈された「専門職」の範疇にされ、派遣先会社(製作会社)の雇用義務の免除が続いてしまいます。
     実際、映画・映像産業で働く派遣労働者は、製作会社の雇用責任の回避、雇用の安全弁として使われているのが実態です。私たちは、専門26業務から「放送機器等操作の業務」「放送番組等演出の業務」を除外することを強く求めるものです。
     映画・映像産業では違法派遣が多々見られます。これらを是正し派遣労働者の権利を守るためには派遣先会社との団体交渉がどうしても必要です。派遣先会社の団体交渉応諾義務について、判例に頼るだけでなく、厚労省としても派遣先会社と交渉できる枠組みをぜひ作ってください。
  5.  映画・映像業界の経営者には、労働法についての知識が浅い人が多く、それが労使のトラブルの一因になっているケースが多々見られます。経営者に各種労働法を理解させるべく、周知と指導の強化をお願いいたします。
以上
連絡先
〒113-0033 東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301号
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電話=03-5689-3970 FAX=03-5689-9585